「きゃっ!」
悪の神霊を宿らせたウィロアの手が、愛光の頭を横殴りにし、彼女の躰は吹き飛んだ。
「アイカっ!」
仲間達の悲鳴が聞こえる。それを聞きながら為す術 無く、愛光は地面に倒れ込んだ。
「ほら、ああなりたくなかったら、大人しく渡して?」
「……ぁ……。」
ウィロアの微笑みに、レイムの躰が がたがたと震える。
その時。
「……ふざけんな……っ。」
囁き声のような、息が沢山 混じった、ライネスの声が聞こえた。彼は苦痛に顔を歪めながらも上半身を起こし、レイムを引き寄せ、自分の背中に庇う。
「……そんなに連れて行きたいなら、さっさと連れてけ。他の奴等 傷付けてんじゃねェよ。」
血を失い、くらくらする視界の中で、ライネスはウィロアを睨み付ける。
(……本当は……。)
ウィロアと共に悪魔の元へ行くなんて、嫌だ。
けれど。
――生きて……。
10年前の あの日のように。
護られる事でしか、生きられないのなら。
そんな弱い自分――。
――死んでしまえば良いんだ。


