「は……? 何 言って……。」
アゴラが呟いた瞬間。
ライネスの力強い蹴りが、アゴラの腹に入り、彼は5メートル程 吹き飛ばされた。
むくりと上半身を起こし、ライネスはアゴラを見つめる。長い前髪から覗く紅い瞳が、自分の手から零れ落ちた血が汚した白い肌の中で、不気味に光っていた。
「俺さ……誰かに殺して貰えるのを、ずっと待ってるんだ。」
抑揚の無い、冷たい声が、再び静まり返ったフィールドに響く。
「本当なら死ななきゃ いけなかったのに……死ねなかったからさ……自分で死ぬ勇気も無いからさ……。
生きているのなんか、苦しくて……。
誰かが俺の世界を壊してくれるのを、ずっと ずっと待ってた。だからさ……。」
「ふざけんなっ!!」
ライネスの言葉を遮り、アゴラは再び大剣を持ち、ライネスに飛び掛かる。
「殺してくれだと!? 俺は誰かが苦しむ姿を見たいだけで、受け入れて欲しい訳じゃねェんだよ!!」
アゴラの剣がライネスの躰を貫こうとした刹那。
ライネスは素早く前転し、アゴラの背後に回ると、地面に落ちていた自分の剣を拾い、アゴラに向き直った。
「……何だ。お前も、俺と同じで臆病なんだな……。」
「何……っ!?」
アゴラがライネスの言葉に声を荒げ、振り返った瞬間。
ライネスの剣の柄は既に、アゴラの頭を捉えていた。


