「あぁ、ほんとに殺しちまうのも良いかも知れねェなぁ。」
その言葉に、会場は凍り付いたように静まり返った。
その空間に、くっと小さな笑い声が聞こえた。
――ライネスの。
窮地に立たされている筈の彼は、笑みを浮かべていた。
見る者が目を離せなくなるような、艶やかな笑み。
愛光が初めて見たライネスの笑顔は、とても とても。
――綺麗だった。
「……殺す? 俺を?」
「あ、あぁ。」
ライネスの笑顔に動揺し、アゴラは小さく頷いた。
その瞬間。
ライネスはアゴラの大剣の刃を素手で掴み、自らの首に当てた。
ライネスの右手から、ぼたぼたと鮮血が滴る。
きゃあっ、と観客席から小さく悲鳴が漏れた。
「殺してくれんの? じゃあさ……今直ぐ殺してくんない?」
愛光達は、耳を疑った。
笑顔で自分を殺してくれと言ったライネスに、皆が恐怖を覚えた。


