予言と未来




「……ふぅん。上手いんだ。」



ルウは小さく呟く。するとリーは、哀しげに微笑んだ。



「……昔、死に物狂いで逃げた事が在ったからね。」


「死に物狂いで?」



ルウが訊き返すと、リーは頷く。



「……悪魔の残党が お父さんと お母さんを殺して、誰からも守って貰えなくて……死にたくなくて、必死に逃げたんだ。」



リーの言葉に、愛光の斜め後ろに居たライネスが、はっと息を飲んだ。



小さく後ろを振り返って見る。



彼は明らかに動揺していた。



「……ライネス?」



同じく気付いたリホがライネスに声を掛けるが、彼はフィールドに居るリーを凝視している。



「……悪魔を、憎んでる?」


「どうだろう?」



ルウの質問に、リーは首を傾げた。



「正直、誰を憎めば良いのか解んないよ。この天界を護る役目を担ってた龍族が、壊滅させられなければ、残党が平民を襲う事なんて、無かったんだからさ。」



リーが そう言った瞬間、ライネスは だっと その場から走り去った。



「ライネスっ!?」


「……でもね、そもそも龍族を殺した悪魔が、悪いよね。」



リホの呼び掛けと、リーの哀しげな言葉は、ライネスの背には届かなかった。」