いつも友美と行く小さなカフェで、愛光と赤髪の少女は向かい合って座った。
愛光の前にはエスプレッソ、少女の前にはレモンティーが置かれている。
ほかほかと湯気が立つ それを一口 飲んで、少女は口を開いた。
「改めて、初めまして。私は、リホと申します。」
「…………。」
苗字を名乗らない彼女を、愛光は僅かに眉を顰めて見た。
その視線に気付き、リホと名乗った彼女は、穏やかに微笑む。
「あぁ、苗字は無いんですよ。それについては また後程。貴方の お名前を訊いても良いですか?」
「……愛光です。」
身元が解らないリホに、余り個人情報を渡すのは良くない。そう判断し、愛光は名前のみを名乗った。
「アイカさん。良い お名前ですね。」
「どうも。」
明るく笑うリホと、素っ気ない愛光。
しかしリホは、笑顔を崩さなかった。
「それじゃ、本題に入りますね。」
再びレモンティーを一口 飲み、リホは真剣な表情に なった。
「私は、貴方を誘う為に、異界から来たんです。」
「は?」
愛光は、またしても ぽかんと してしまった。
「……頭、大丈夫ですか?病院なら――。」
「失礼な方ですね。」
愛光の態度に、リホは苦笑した。


