「やっぱり新鮮な材料を使ってるから美味しかったわね」


おごりというから悪いと思って遠慮がちに注文すれば、「これも取材のうちで経費で落とすわ」と美紀さんは領収書をレジでちゃっかりともらってたし。


取材経費ならもっと注文すれば良かったかなあ……なんて食いしんぼなあたしは考えだけど、でも、何を出されたところで味なんか解んなかったけどね。


本当に完全に失恋したんだもん……。


あたしなんかにキスされかけて窮地で困ったろうに、明石先輩は最後まで大人な対応をしてくれて……。


最後にありがとうなんて言われちゃ、諦める他にないでしょう。


……失恋記念だわ!やけ食いしちゃるっっ!!


「あの、デザートにかき氷なんかいかがですか? 冬の間に切り出して氷室(ひむろ)で保管した天然の氷を使ったかき氷屋さんがあるんですよ」


あたしが提案すると、美紀さんが
「へえ、それは珍しいわね。 取材の価値があるかも」と同意してくれたから、男性2人を引っ張る形であたし達が率先してそのかき氷屋にやって来た。





そのお店は昭和初期から続く山潮では馴染みのお店で、夏の間は海の家として営業してるから、海岸沿いの道を歩いて砂浜に出ないと行けない。