その実野島は自力で暮らすため、バイトして稼いで……誰にも頼らずに生きてきたんだ。


あたしが家族に囲まれて美味しいご飯をお腹いっぱい食べてても、野島は家に帰ったらたったひとりで、身の回りは全て自分でやって、時間がないからきっとご飯は出来合いのもので。


あたしは知らなかった……自分の幸せが当たり前すぎて、野島のように与えられない人がいる現実を。


もう少し早く野島を知るべきだった。


知ればどうという事はないけど、少なくとも野島を見る目が変わってたと思う。


あたしは野島にひどいことをしてた……。


なのに、野島はこんなあたしでも助けてくれたばかりか、とても優しくしてくれたんだ。


なんて、恥ずかしいあたし……。


見た目だけで判断して関わろうとするどころか避けてたんだから、野島から非難や苦情があっても不思議じゃないのに、やつからはその事について一言も触れないんだから。


こんなに……いい奴だったんだ。


あたしは目の奥が熱くなったけど、滴がこぼれ落ちないように気をつけながら小さい声で謝った。


「……ごめん」


何に対してか訊かれれば、全てと答えたいけど、野島だけには突っ込まれたくはないよ。