襖がすらりと横に滑る音がして、あたしは体を強ばらせた。


泣いてたなんて知られたくないから、体を動かさないよう注意を払いながら息を潜める。


遠慮がちに踏み入れた足音が聴こえて、それから静かに相手は近づいてきた。


お願い、来ないでよ。


緊張した体が震えそうになるし、握った手のひらが汗ばんだ。


だけど、あたしの願いも虚しく、足音はあたしのそばで止まった。


畳が擦れ、何かが置かれた軽い音が聴こえた。


「鈴本、スイカ食えよ。ここに置いとくからな」


いつになく優しい野島の声だった。


けど、あたしは返事なんかするもんかと口を噤む。


あたしのタヌキ寝入りを見抜かれたのか解んないけど、苛立ちと意地からあたしはやつとまともに話そうとしなかった。


野島はそう言っただけで長居する事なく、すぐに立ち上がった気配がした。


たぶんあたしに配慮したんだろうけど、あたしはなんだか物足りない気がして思わず布団を持ち上げ、そうっと野島の後ろ姿を窺い見たんだけど。


襖を開いた瞬間に野島がふっとこちらを振り向き、あたし達の目線はバッチリぶつかった。