野島が後ろ頭に手を当ててうずくまってた。
「ってえ……」
「ごめん野島!」
うわ、自分の体面を繕おうとして野島にはひどいコトをしちゃったよお。
あたしは野島に歩み寄ると、しゃがんで恐々と訊いてみた。
「ほんとごめん! 大丈夫?」
「……大丈夫じゃねえ~! オレのデリケートな頭が記憶喪失になったらどうしてくれんだよ!?」
「あ、それいいじゃん」
野島が涙目で言った恨み言に、なぜか茉莉花が手をたたいて同意する。
「野島クンが記憶喪失になれば、お姉ちゃんのカレシってすりこめばいいんだし。いわゆるインプリティングってやつ」
「そ、それこそあり得ないあり得ないあり得ないからっ!」
あたしが全力で力一杯否定すると、野島は部屋の片隅で影を背負いこみ、いじけながらぶつぶつ言ってた。
「ちぇっ……オレは鶏かよ。それに、んなに目一杯否定しなくてもいいじゃん」
「ぷっ……面白いお兄さんじゃん」
茉莉花はなぜか野島の哀愁感漂う後ろ姿がツボに入ったみたいで笑い転げてるし。
「もう、茉莉花。あたしに何かあったんでしょ?」
あたしがイラついて訊くと、やっと思い出したらしく、笑いすぎて咳き込みながら口を開いた。