勇人の体は――
心臓も呼吸も完全に止まり、校医の先生が処置を施したけれど。
――10分後、野島勇人の死亡が告げられた。
悲鳴とすすり泣きの中、あたしは勇人の傍らで彼を抱きしめてこう言った。
「ありがとう……勇人。あたしの約束……ちゃんと守ってくれたよね。
辛かったんだよね、苦しかったんだよね。
でももう苦しみも痛みもないんだよね。
ゆっくり休んで……あたしは勇人にたくさん色んなものをもらえたから、ずっと生きてけるよ。
ありがとう……さよなら」
あたしがひと粒の涙を勇人の頬に流した瞬間、少しずつ雨が弱まってさあっと茜色の空が広がった。
まるで、あたしと勇人が出逢えた時に見た夕焼けと同じきれいな空だった。
その中を白いものが輝いて見えたのは、たぶんあたしの気のせいだったと思う。
だけど、なぜか大粒の涙が出て仕方なかった。



