くるうみ。~あなたと過ごした3日間~

「ほら、野島勇人! 頑張って!」


「あとちょっとだぞ!」


みんな勇人の様子がおかしいと気づいても、止めろとは言わない。


きっと勇人の気迫が伝わったんだ。


いちに、いちに、とかけ声を貰いながら……


勇人とあたしは山潮の海岸まで自力で歩き通した。


あたし達が着いた瞬間、雨の中にも関わらずみんなから大歓声と拍手が沸き上がり、あたしは泣きそうになりながら、
「良かった……勇人良かったね。渡れたじゃない! やっぱり勇人はすごいよ! これなら病気だって裸足で逃げてくって」
あたしは泣き笑いで勇人にそう言うと、彼は微かに笑って答えてくれた。


「……そうだな……奇跡は……起きるんだ。
瑠璃香……ありがとな。おまえに逢えて……よかっ……た……」


伸ばされた勇人の手は――


あたしに触れることなく力を失い、コトンと落ちた。


「勇人……?」


揺すって名前を呼んでみた。


だけど、閉じられた目は開かない。


口はあたしを呼ばない。


体が動かない。