お昼前には洞窟から出ないとくるうみの渡りが出来ない。


あたしは本当に名残惜しくてちょっと泣いたけど、勇人と一緒に洞窟を後にした。


勇人が作った特製のカッパを2人で被って歩いたけど、そばにいる勇人の体温が低いって気付いたのはしばらく経ってから。


指だけじゃない。


胸や背中や足……いろんな場所がひんやりしてて、いくら雨に濡れたといっても不自然過ぎる。


「勇人、体が冷たいじゃん! 大丈夫? 洞窟に戻って休もうか?」


あたしがそう提案しても、勇人は白い顔で大丈夫と笑って見せた。


「大丈夫だ。約束したろ? くるうみは無事に終えるんだって。
野島勇人に二言はないぜ」


ふざけた調子でそう言った勇人は、あたしを片手でぎゅっと抱きしめて小さな声で囁いた。


「頼む瑠璃香……男としておまえを最後まで護りたい。わがまま言ってごめんな。だけど、約束、守らせてくれよ」


勇人の声に力がなくなってきたのが解る。


だけど……


勇人は。


あたしとの約束を大切に


最後まで頑張りたいと強く願った。


だから。


あたしはわかったと答えた。