くるうみ。~あなたと過ごした3日間~

だけど、野島はこうしていればカッコいいのに、なんで普段はああして情けない人間を装ってんだろ?


あたしを背負って歩いてるのに、息切れすることもないくらい体力あるし、めちゃくちゃ喧嘩は強いし、外見だって悪くないのに。(口は悪いけど)


だけど、それを訊くのは憚られた。


なんとなく訊いちゃいけない……と漠然と思う。


あたしが野島と関係ないって事もあるけど、なんだか訊いてしまうと戻れないような気がした。


踏み込んでしまえば、きっと……。


微かな怖さを感じたあたしは、野島に軽口を叩いてみた。


「ね、野島は『くるうみ』誰と組みたい?」


『くるうみ』ってのは、山潮町の沿岸で年に一度起きる不思議な自然現象。


山潮町の内湾に浮かぶ『辰美(たつみ)島』が引き潮で内陸と繋がる事を指して言う。


辰美島は5キロくらいの小島で、崖や断崖が多いから人は住んでない。


で、『くるうみ』があるまでの3日間、あたし達の通う山潮高校には奇妙な伝統行事がある。