なんだがドキドキした気持ちがしぼんで、心が沈み込んだ。


ブラシを動かす手も止まって、焚き火で照らされできた自分の揺らめく影を俯きながら見てた。


……怒ってるの?


なぜそんなに機嫌が悪いの?


いつものあたしなら勇人に気軽に訊けたのに、今のあたしはまるで別人みたいな勇人が怖くて、臆病なうさぎみたいにビクビクして心細い。


どうしよう……


どうしたらいいの?


あたしは泣きそうになって唇を戦慄かせた。


「瑠璃香」


勇人に呼ばれるまでが長くて、永遠なほどに長くて。


涙を拭って顔を上げると、勇人が謝ってきた。


「悪い、俺……初めてだからさ……気の利いたセリフとか考えてたんだけど全部頭から吹っ飛んじまって。
だからっておまえを不安にさせて最低だよな。

正直言えば俺も怖い。
おまえを大切にしたいけど、好きすぎて乱暴にしそうでさ。
今なら止められる……どうする?」


勇人があたしから目を逸らして背を向けながら言う。


必死に耐えてるんだ。

だから、余裕がなくてそんな風に無愛想になったんだ。