あっと言う間に海に落ちて一旦沈んだけど、勇人が庇ってくれたから痛くもなかったし、怪我もしなかった。


海面に浮かんでみると、あたし達は崖の凹んだ部分ギリギリに落ちたみたい。


助かったあ……。


「勇人、ありがとう」


あたしがしがみついたままお礼を言うと、勇人はにっこり笑ってふてぶてしくもこう言った。


「どう致しまして。お礼ならキス一回でいいから……いてっ!」


ふざけた事を言う勇人の口をつねってあげた。


「寝言は寝てる時に言ってね。早く上がって洞窟の様子を見なきゃ。雨も降りそうだし」


あたしがそう言うと、勇人はケチとかぶつぶつ言いながら近い海岸に上げてくれた。


海岸から少し登った場所にあたしの見つけた洞窟があり、しかもそのそばに清水の湧き出す泉があった。


洞窟の中を調べてみたら、平らな部分もちゃんとある。
勇人と協力して石をどけて地面を均し、近くの森から落ちたらしい落ち葉を敷いて上から布を被せれば、簡易なベッドが出来上がった。


後は勇人が石で囲んで焚き火用の場所を作って、石を積み上げてかまどまで作ってくれたし。