「こっちに水が流れる音がする。水は必要だもんな! とりあえず行くか」


「え~~ 水飲むだけなの? 魚とか居そうにない?」


勇人の呑気な口振りに、歩き回った疲れと空腹と雨が降る予感の苛立ちが重なって、あたしはイライラがますます強くなったから、彼に突っかかるように言っちゃった。


「大丈夫、流れが早いからたぶん川だと思うよ。さ、行こう」


勇人に手を差し伸べられ、あたしはイライラを我慢しなきゃと堪えて彼の手を取った。


「途中足場がかなり危険だから、手を離しちゃ駄目だからな」


「ん」


かなり投げやりな返事をしたあたしの様子を気にする風もなく、勇人は今居た場所から更に森の深みに向かってった。


なるほど、勇人が言うとおりに岩でゴツゴツしてかなりの段差がある場所を通らなくちゃいけなかった。


岩は苔が生えてつるつる滑りやすいから、降りる時も慎重に慎重を重ねなくちゃいけない。


一度降りるのに失敗して勇人に抱き留められたけど、心臓がバクバクしてときめいてる暇なんかないよ。


岩越えの次は倒木の多い森で草を掻き分けながら進んだ。