「俺、いつか瑠璃香と本当の家族になりたい。今はまだ何の力もないただの高校生で無責任な事は言えねえけど、高校を出たらちゃんと働く。働いてしっかりした人間になれたら、おまえと2人で生きていきたい。待っててくれるか?」


勇人の告白にじんわりと胸が熱くなり、思わず涙ぐんだあたしは頷いた。


「うん、待ってる……あたしも少しはお料理が上手くなるように練習しておくね」


「そうだな、少なくとも卵焼きには砂糖じゃなく塩を入れるようにな」


勇人がからかい気味に言うから、あたしは口を尖らせて反論した。


「え~、甘い卵焼きもいいじゃん! 山潮じゃ当たり前だよ」


「そっか、山潮じゃ当たり前か。
だけどまあ、俺は塩味が好きだな」


さり気なく好みを主張するわがままな勇人に、あたしは小さく笑って練習しておくねと言った。




この時に見た綺麗なホタルは、あたしの中で一生忘れられない宝物になった。


その後に待ち受けていた運命をよりいっそう鮮やかに浮かび上がらせたから。