「はい」


野島が短く答え、美紀さんは話を継ぐ。


「でもね、スナップ写真ならそれでもいいかもしれないけど、それだと偶然性に頼ることになる。
写真ってのはね、被写体と機材が揃えばいいってわけじゃない。
どんないい素材でも腕がなければ生かしきれないお料理のようなものよ。
大切なのは“心”。被写体が本当に愉しげならば、家族が何気なく撮ったスナップ写真でもその空気は伝わるでしょう?
プロならなおさらこだわるものよ。
いくら腕や機材がよくても、素材が悪ければ台無しになる。いくら繕っても必ずボロが出る。

だから、あなた達には本当に心の底からお祭りを楽しんでもらいたい。
あたしは腕の許す限りその一瞬一瞬を切り取り残していきたいの。
お金を払う以上あなた達は素人じゃなくプロのモデルよ。どう、やってくれるわね?」


美紀さんの実感の籠もった一言一言はなんとなくあたしも共感できた。


写真の世界は奥深いっておじいちゃんから聴いた事あるし。


でも、意外だったのは。


「……わかりました、引き受けます」


野島がこの条件を素直に呑んだこと。


お金の為にと腹も立つけど、あたしはこの機会に必ず野島を締め上げて疑問を解決しようと思った。