……だからあたしは……。
「瑠璃香、覚悟なさい」
ぐわしッ! と亜美に腕を掴まれた。
……だけじゃない。
いつの間にか亜美のお母さんまでにこにこしながらあたしの脇をがっしりと掴んで両脇をがっちり固められたまま――。
あたしは望月家の内部へと強制連行された。
「きゃあああ、なにするのよぉ! 人でなしぃ」
あたしの叫び声は虚しく7月の夏空に響き吸い込まれていった。
「ほら、せめてこのチュニックぐらい着たら? お母さんが東京で買ってきたこの夏の流行りだって」
望月家のリビングであたしはあちこちに広げられた数々の服を選ばされてた。
まあまだ時間はあるからいいんだけど……。
色とりどりの生地は見てるだけで楽しいし華やかだし、心が浮き立ってくる……のは昔だけ。
今のあたしはまるで孔雀の羽で着飾るカラスみたいな心境。
うわべだけ繕っても虚しいだけだとイヤと言うほど経験したから、あたしは地味に生きようと決めたんだから。
「ごめん、亜美……どれも悪くないんだけど、あたしには似合わない。
もっと合う人に着てもらわないと服も可哀想だよ」



