階段に取り残されたあたしは意味が解らなかった。
……なに、今の?
野島があたしを無視した?
聴こえなかったはずはなかった……よね。
一度反応したんだから。
お弁当を持ったまま、あたしは階段の中ほどでぼう然と立ち尽くした。
まさか……だよね?
もしかしたら珍しく機嫌が悪いだけとか、体調が悪いとか。
たぶん、何か原因が……
でなきゃ、野島があたしを避けるなんてないよ、うん。
あたしは曾おばあちゃんのペンダントを握りしめて、亡き曾おばあちゃんに問いかけた。
曾おばあちゃん、きっとそれだけなんだよね?
野島はきっと何か理由があって……そうだよね?
きっと時間が経てばいつものようにコロリと忘れて、バカやってくる。
そう決まってるんだから……。
授業が始まるチャイムを聴いたあたしは慌てて階段を駆け上がった。
化学の先生に怒られながら、あたしの心の中では野島のことを考えてた。
化学実験室の中に班分けされた違う台の野島をチラリと見たけど、他の人はあたしを見てるのに、野島だけはテキストを広げてこちらを見ようともしない。
それを認めた刹那、なぜか胸の奥がチクリと痛んだ。



