夢が現実かわかんないけど、あたしの脳裏には苦しんでた野島の姿が焼き付いて離れない。
お母さんの作るお弁当はもちろんボリュームも栄養も完璧だけど、猫ちゃんとわけあったなら足りないはず。
野島にはもっと栄養が必要かもしれない。
そう感じたあたしは野島にお弁当作り宣言すると、返事を聴かずに急いで物置小屋から逃げ出した。
……ドキドキした。
なんで……あんなこと言っちゃったんだろ?
あたしはお料理が何よりも苦手なのに。
息を弾ませながら教室に戻ったあたしは親友の亜美から質問を矢継ぎ早に浴びせられたけど、もちろん本当のことなんか言えやしない。
途中で気分が悪くなって保健室で休んだって誤魔化した。
最後の6時間目の体育は水泳かあ……イヤだな。
あたしはカナヅチで泳げないし、水中で目を開けるのさえ怖いんだよね。
小学校からやり直せってよく言われる位にヒドいんだもん。
水着やタオルが入ったビーチバッグを手に亜美と女子更衣室に向かう最中、渡り廊下で明石先輩を見かけたからペコリと頭を下げたんだ。
だけど……
見えたはずなのに、明石先輩はなぜかあたしから目を逸らしてすれ違った。



