どうしてそんな風に考えたのかわからない。
わからないけど、このまま野島が眠り続けては危ない嫌な予感がしたから。
この歌に捕らわれてしまえば、きっと帰れなくなる。
それが意識なのか命なのかまでは知らない。けど、少なくとも二度と目覚めなくなると直感したから、あたしは野島に必死に呼びかけ続けた。
野島、野島!
起きなさいよ……あんたにはまだ借りを返してないんだからっ!
勝手に堕ちたら許さないんだから!
そしたら針千本飲ませちゃるからね!
本気なんだから!
絶対絶対絶対に許さないから!
あんたは……あたしの――
輪ゴムで叩かれたみたいに鋭い痛みが頬を走って視界が戻った。
……と。
膝に寝てたハズの野島がいなくて顔を上げれば、すぐ目の前にヤツの顔があって、何やらニヤニヤと笑ってるし。
「野島、体は大丈夫なの?」
なんかムカッときたけど、急いで訊いてみたら、ヤツははあ?という顔を作る。
「体調? なにいってんだよ。寝ぼけてんのか鈴本?俺はずっとおまえにひざまくらしてたんだぜ?
鈴本って寝顔が面白いのな。歯ぎしりに寝言にいびきまですんだもんな」



