午後の授業が始まるチャイムが鳴っても、野島は目を覚まさなかった。
あ~~、授業サボっちゃった。
あたしにとっては生まれて初めてだから、なんだか後ろめたい気持ちになったけど、だからって野島を見放していくなんてできっこない。
……まあいっか、苦手な数学だったし。
先生には後で保健室に行ったとか言い訳でもしておこうっと。
授業が始まったからか、風音と梢が揺れる音以外は何も聴こえない。
静かだなあ……。
物置小屋はろくに清掃もされてなくて埃っぽいけど、まあなんとか我慢できる範囲内。
湿気たカビ臭い空気はちょっと苦手だけど。
さわ、と風が吹いて頬を撫でた。
……ん、風?
隙間が酷いのかなあ、この小屋。
のんびりそう考えたあたしは、膝が異様に熱くなってきた事に気づく。
なんだろ? 野島の熱が上がったのかなあ。
そう考えて野島の顔を覗き込もうとしたら、ヤツの体が淡い光に包まれ始めてた。
青白いその揺らめく燐光は、野島体全体から発されるように見える。
それを見たあたしは思い出した。
間違いないよ……
雨の中で見たあの輝きと同じだ。
そして、キミコおばちゃんの龍神像も同じように光を纏ってた。
これはいったいどういうことなの?



