横目でチラチラと様子を窺いながら、あたしは野島に猫の話題を振ってみた。


視界の隅に捉えただけだから、野島がどんな表情をしたのかわかんないけど、ヤツは素直に話題に乗ってくれたからホッとした。


「……こいつを拾ったのは入学式前の入学説明会の時だったかな。
ダンボールに入れて捨てられてたんだ」


「へえ、よくある話だけど、それで世話するなんて、野島って見かけによらず意外といいヤツじゃん」


あたしが素直な感想を言えば、野島は意外は余分だとふてくされた。


よっし、話題転換成功。


だけど、野島はどうしてかそれ以上話をしようとしない。


いつもなら、頼まれずとも1人で1日中喋りそうなヤツなのに……。


気分でも悪いのかな?


気になったあたしは手元に遣った視線を上げて、野島を見てみたけど。


ヤツの横顔は、どこか思い詰めたような、怖くなるくらいに真剣な色を宿してた。


虎猫の体を撫でた手も動きを止めてる。


……なんだかおかしい。


「野島、気分でも悪いの?」


心配になって体を少しかがめて覗き込んだあたしに、野島の手が伸びたかと思うと、がっしりと手首を掴まれた。