「は? 意味わかんねえ」


空気が。

ビリビリと音を立てているみたいに。


「いいから。
一人で行かせてよ」


二人の間に。

亀裂が入っていくみたいで……



「……行かなきゃ」


美山さんが、腕時計て時間をチェックすると。
シュルリ、と、踵を返す。



「おい、章江」


「来ないで」


美山さんは振り向かない。


「僕も行く」


「来ないでってば!」


あたしは、二人をただ、見ているしかなくて。

アスファルトの冷気が。
足を伝って、どんどん体を冷やして。



「……ねえ、待ってよ。
二人とも……」


声が。
寒さでだんだん弱くなっていく。


「どこ行くの?」


二人は、あたしを見ない。

お互いに何か言い合いながら。
土手を登って行く。



「来ないで! 瑠樹亜。
ひよも止めて!」


「……え」


突然、美山さんに呼ばれて。

あたしが土手を見上げると。


プアーーーッ………


遠くの方で。
汽笛が聞こえたような気がした。


その、無情な音に……

……背筋が凍る。