……ハアッ


ハアッ……ハッ……


……



どれくらい、走ったんだろう。


こんなに走ったのは。
体育祭の時の、マラソン以来かな。


風が冷たいし。
足はすごく冷えていたけど。

体は熱かった。


瑠樹亜が立ち止まっているのが見える。

その先に。
もう一つの人影があるのも。



「章江!」


瑠樹亜が、人影の名前を呼ぶ。

今までに聞いたことのない。
感情が高ぶっている瑠樹亜の声だ。


切羽詰まった瑠樹亜の声に。
あたしも足を早めようとするけれど。

足がもつれそうになって、思うように動かない。



「……ハッ……、みやまさ……」


あたしもやっと、二人の影に追い付いた。


息を切らせながら人影を見ると。
青白い顔が、こちらを見ている。



「……なんで……」


か細い声が、小さく落ちて。


「一人で行く気かよ」


瑠樹亜の強い声が。

それを遮った。



美山さんは幽霊みたいに漂って。

くるぶしまである、コバルトブルーの長いワンピースを着ていた。

ビーズが刺繍してあるのか。
スパンコールなのか。

時々キラキラと。
外灯の明かりを反射した。

足元は白いパンプス。

帽子とお揃いの。
お花のモチーフが付いているみたい。