「……今、何時?」
「……え?」
「今何時?」
瑠樹亜が突然、そんなことを聞くから。
あたしは訳が分からなくて。
こんがらがって。
「え、え……
わか、わかんな……」
「スマホ、持ってきて」
「え?」
「スマホ! お前の」
瑠樹亜の声は。
いつも冷たいだけの瑠樹亜の声が。
急に、強くて。
びっくりして。
あたしは慌てて、バッグの内ポケットにしまってあるはずのスマホを取りに行った。
「……23時……6分……」
あたしがスマホに表示されてある時間を読み上げると。
瑠樹亜は突然立ち上がって。
その表情を見ると。
凄い形相で何かを考えてるみたいだった。
「どうしたの……?」
あたしの質問にも答えなくて。
「ねえ、瑠樹亜」
呼び掛けにも答えなくて。
黙ったまま、暫く頭を抱えて。
「……くそっ……」
急に、言葉を吐き捨てると。
「ちょっ……どこ行くの?」
瑠樹亜は、文庫本を放り投げて。
一人で走り出した。
「ちょっと待ってよ!」
あたしも訳が分からないまま。
瑠樹亜の後に着いて走る。

