………


みんなではしゃぎながら。
河原からの帰り道を歩いている時も。

木村のおばあちゃんが作ってくれたツミレ汁を。
おいしい!と言って食べている時も。

のんとおしゃべりをしながら。
お風呂に入っている時も。

おやすみ、と言って。
みんなが目を瞑ってしまってからも。


あたしの脳裏には。

ずっとずっと美山さんの白が。
あの、陶器みたいな肌の色が離れなくて。


悲しそうに笑った顔も。
ありがとうと言った声も。

全然頭から離れなくて。


すごくすごく。
嫌な胸騒ぎがしていた。


どうして、あのタイミングで帽子をくれたんだろう。
明日でもいいのに。

明日、別れ際に。
渡してくれたらよかったのに。

明日は暑いみたいだし。
移動も長いから、外も少し歩くだろうし。


なのに。
今日。

最後の日ではなくて、今日。

あたしに帽子をくれた。


それに。
何か意味があるような気がして。

それを見逃したら。
めちゃくちゃ後悔するような気がして。


何だか分からないけど。
眠れそうにない。



……カサ。


カサ……


縁側の方では。
微かに、ページを捲る音がしていて。

瑠樹亜がまだ起きていて。
昨日みたいに縁側に座っていることを知らせてくれている。


あたしはそっと布団から抜け出して。
鞄から美山さんの帽子を探し出すと。

瑠樹亜のいる、縁側に出た。