「お前ら傍観者はいいよな」



瑠樹亜の冷たい、低い声に。
みんながハッとする。


空気が張り詰めて。

キリキリした。



「ただ、高みから見下ろしてればいいんだから」



「……は……」


山本が言葉を失ってる。


……見下ろす?

そうじゃない。
そうじゃないって、大声で本当は。

言いたいんだと思う。



「可愛そうだ、何とかしてやりたいって。
そういうの、烏滸がましいんだって気付きなよ。
同情なんだよ。

それとも偽善?
そういう自分が格好いいとか思ってる?」



そう言う瑠樹亜の口許は。

微かに笑っていた。




「瑠樹亜、お前、言い過ぎだ」


何も言えない山本の代わりに。
向井が口を挟む。


「そうよ、瑠樹亜」


のんもそう一言投げた。



けど。
うん、けど。

あたしは両方の気持ちが分かる。


渦中にいる瑠樹亜と美山さんは。
世界を終わらせたいくらいに辛いんだから……



瑠樹亜は黙ったまま、また文庫本を広げてしまった。

何事もなかったように。
ページが捲られていく。