「私と瑠樹亜はね、いとこ同士なの」


ふと、視線を反らして。
美山さんが窓の外を見詰めながら言う。



「いとこ……」


「私の母は、瑠樹亜の亡くなったお母さんの姉なんだ」


いとこ同士。
そう言われれば、そう見えないこともない。

美男美女。
二人は儚げな雰囲気もよく似ている。



「いとこ同士とは言っても、そう頻繁に会ってた訳じゃない。

けど、瑠樹亜のお母さんが父の病院に入院してきて。
私達はよく顔を会わせるようになった。

あの頃は瑠樹亜もごく普通の活発な男の子で。
病院の中庭で、よく二人で虫を探したり花を摘んだりしたな。

まだ、私達が10歳の頃だった」


10歳……

その頃の瑠樹亜を想像してみる。
けれど、うまく形にならなかった。



……しとしとしとしと。

微かな音を立てて。
雨はまだ降り続いている。



「あの時はよく知らなかったけれど、瑠樹亜のお母さんは、癌だったらしいの。
だけど、懸命に治療してたって。
放射線にも、抗がん剤にも、よく耐えてたって、母が言ってた」


「……癌」



口に出してみると、すごくすごく重い言葉。
たった二文字なのに。
悪魔みたいな言葉だ。



「だけど……」


そう呟いてから、美山さんが息を飲む。
それから、あたしの目を真っ直ぐに見た。

瑠樹亜を知る覚悟はある?

その目に。
そう問われているような気がした。