「僕はといえば。
昨日までの2日間、女のための猿だったよ。
何回も何回もやらされた。

あの女も、狂ってる」



……やらされた。
あの女。
狂ってる。

ベンツのひとだ。
お母さん、凪さんのことを言ってるんだ。


あの日の光景とイタリアのオペラが。
フラッシュバックする。


白い太ももがあたしを責める。

「あっちいけ」
そう言った、瑠樹亜の唇。


……胸が苦しい。

理解できなくて。
消化できなくて。

呼吸が苦しい。

あたしの感情が静かに静かに崩れていく。

しおりが歪んでくる。
目の前が、ぐらぐらだ。



「やめて……」


「は?」


「そんな話、やめてよ」


絞り出したあたしの声に、瑠樹亜が初めてこちらを向いた。
あたしも視線を合わせる。

感情が死んでいる。

奥の奥を覗くと、青白い顔のあたしがいる。


「お前が知りたがったんだろ」


「……」


「覚悟もないくせに」


「……」


「興味だけで人を見るな」



興味だけで?

違う。
あたしは違う。

瑠樹亜が好きなんだ。
大好きなんだ。

けど、本当に違う?

わからない。
わからなくて。

苦しい。