「私は、幸せだよ。」
「……。」
「こうして、みんなと花火大会に来れて、ワイワイ騒げて、すっごい幸せ。」
「……。」
そう言って美丘は前髪の分け目をさりげなく変えながら、俺の目をジッと見た。
「龍くんだって居るし。」
ーー心臓が、止まるかと思った。
俺の目と美丘の目が、繋がったかのように目があって。
美丘の紅い唇が、いつもより華やかな真っ黒なボブが、綺麗な浴衣姿が、今日初めて真っ正面から俺の視界に入ってく。
龍くん、って。
龍くんもいるし、って。
あの綿菓子みたいな甘ったるい声で、美丘はアイツの名前ではなく、俺の名前を呼んだのだ。
美丘が、俺のために、俺だけのために、目をクシャクシャに細めて微笑んでる。
PM9:28。
ーーもうそろそろ、花火が始まる時間だ。
「美丘!」
思わず、右手が伸びていた。
美丘の浴衣の裾を、突発的に掴んでいて。美丘が驚いたように、俺の姿を捉えている。

