「写真は去年撮ったやつなんだけど…。
俺、新緑の季節が好きなんだ。空気も瑞々しくて、植物のにおいも乱暴なくらい濃いでしょ。夏に向けて力を溜め込んでる感じがして。そういうのを表現したかったんだけど…出来上がりはなんだか落ち着いたものになってしまった。」



そう言って、肩を竦めた彼を私はまじまじと見つめていた。
自分と同じように季節の移ろいを感じとることができる人に、初めて出逢ったと感じていた。



「なんか…よくわかります。私も同じこと感じるかも…。」



私はそうつぶやき、もう一度彼の写真を見上げた。



暖かな春の日差しを受け、若葉の香りが漂ってくるような彼の作品と彼自身が、なんとなく重なって見えた。