「マーマー。」 私のことを待ちきれなかった娘が、私を呼びながら、階段を駆け上がってきた。 「ああ、ごめんごめん。待ちきれなかったの?」 娘の小さな体をぎゅっと抱きしめる。ミルクの様な子ども特有の甘い香りが、鼻をかすめる。すると、圧倒的な幸福感が私を包んだ。 私はハッとした。 彼へ伝えたかったことがわかったような気がした。 自分でも、おかしいと思う。 もういない人なのに。 でも、願わずにはいられないのだ。