すると、彼女はキャラメルを棚に戻し、チョコレート菓子を手にレジへとやってきた。
寺尾はとっさにレジに視線を移して、彼女から菓子を受け取る。
バーコードを赤い光に当て、値段を口にしながらレジ袋に菓子をいれると、ふと、寺尾は彼女の視線が気になった。
彼女は財布に手をかけつつも、じっくりと、恍惚な視線を寺尾に送っていた。
よく見ると顔の整った少女で、うっとりとした表情をしていると、余計にそれが際立つ。
(変な子だな)
寺尾はたじろぎながらも料金を受け取った。
少女はパッと見て十六、七という年頃である。
どう考えても、その年の少女が、三十路の男にそんな視線を向けるはずがないのだ。
しかも、落ちぶれた人生を送っている、フリーター同然の男になど。
寺尾は料金を受け取り、二円の釣りを渡すと、チョコレート菓子を渡す。
少女はにこりと微笑んで、菓子を受け取るなり、そそくさとコンビニを後にした。