「……覚えていてくれて、ありがとう…」 絞り出した彼の声は、あのときと同じだった。 弱くて震えていて消え入りそう。 今にも泣きそうなのに、腕だけは強くわたしを捕まえていて。 まるで逃げないでと懇願されているようで。 逃げるわけ、ないのに。 だけどそんな臆病なところも嫌いじゃなかった。 わたしに縋ってくれているのが寧ろ嬉しくて。 自分が自分じゃないみたいに、高揚していた。 「つまらない話だけど、ちかに聞いて欲しいんだ…」 きりのくんはゆっくりとあれからのことを教えてくれた。