しかしローガンは、キャロライン皇女様にはダニエル皇子が居ると言う。そしてイザベラ皇女様の傍には誰も居ないと。



「いえ。このローガン、貴方様と共に参ります。」



頑なに譲らず、出て行こうとしないローガン。そんな彼を見てキョトンとしてからイザベラ皇女様はクスリと微笑んだ。



「ふふ。あの世に?」

「イザベラ皇女様となら地獄も悪くないです。」

「あら。勝手に地獄なんて決めつけないで下さる?」



束の間の平穏。鉄臭い広間、その異常な背景のなかで皇女様と中将は笑いあった。もう、地位も、名誉も、家柄も、身分も、関係ない。縛るものがなくなった二人は、普通の女と男そのものだった。