『忘れるな……』 その声は、最初、ノイズに近い小ささで僕の耳に届く。 ザザッ、ザザッ……。 壊れかけているブラウン管が発するようなノイズ。 そして、段々と、やっと聞き取れる程の大きさになり、僕の頭を占領していった。 これは『声』ではない。 アイツはこんなに弱々しくない。 いつも自信に満ち溢れ、驚くほど豪胆で、冷たさを感じさせる程に冷静。 それが『声』のはずだ。 こんな、か細く、今にも自らを消してしまいそうな、そんな存在ではない。 ではいったい、この声は何なのだろうか。