「先生……ありがとうございます」 僕はそれだけ言うのがやっとだった。 僕の心の霧も晴れていく。 黒い感情が薄まっていくのを感じる。 僕の中に巣食う何かも。 頬を伝う、熱いものを感じる。 僕は下を向いてそれを隠しながら、琢磨の母親のおにぎりを食べていた。 琢磨はその大きな手で、僕の頭をがしがしと撫でながら、自分の湯飲みでお茶を飲んでいた。 その時だった。 教室の後ろの引き戸が勢いよく開く。 僕は涙で霞んだ目でそこを見た。