江口さんが咳払いをする。 見ると、右の耳に指を近づけたまま、少し困った顔をしていた。 原田が来たのだろうか。 だが、江口さんの指は、一向に耳に触れようとはしない。 僕は振り返れない。 重大なミスを犯したのかもしれない。 記号たちがいつも連れ立って行動するのはわかっていたはずだ。 それならば、そこに坂木がいてもおかしくは無い。 ミスだ。 なんで、そんな単純なことを見落としていたのだろうか。