僕は原田が立ち去るまで、そこでじっと息を潜めていた。 原田は江口さんに相手にされず、少し肩を落として帰っていく。 江口さんは原田の出て行った方向をぼんやりと見ていた。 「ただいま!」 教室の引き戸を勢いよく開けながら、僕は明るくそう言う。 その音と声に驚いたのか、江口さんは椅子の上で小さく跳ねた。