人は、自分を認めてくれる人、自分を見ていてくれる人に惹かれる。 江口さんの僕に対する感情は、そういった誰にでも起こる勘違いから発しているんだと思う。 だが、それを利用させてもらう。 「教室に戻ろう?」 「……うん」 僕は、江口さんを置いて、さっさと歩き出す。 後ろを振り向くと、傷ついたような顔の江口さんがまだそこに立っていた。