ぼんやりと教師が話す漢文を聞いている。 『虞美人草』 たしか、中国が「秦」から「漢」という国名へ変わる時の話だ。 「『虞や虞や若を奈何せん』ここは試験に出ま〜す……」 教師の言葉が続いている。 その言葉に必死に蛍光ペンで線を引く者。 シャーペンで何かの書き込みをする者。 聞いていない者。 小さなメモを回す者。 僕もつい最近まではその中にいたことを、クラスメートを見て改めて思う。 僕はいつか、その場所へと戻れるのだろうか。