「サトちゃん、何してんの?」


みどりは、昨日の事など、何事もなかったかのような笑顔で話しかけてくる。

僕は、その笑顔を見てすごく安心した自分を、心底ズルイなと思っていた。


「修学旅行のクラス委員になってさ。これ、貰いに行ってたとこ」


僕はさっき貰った、ひどい見た目の、旅のしおりを掲げる。


「クラス委員なっちゃったの!? ご苦労様だね」


みどりは剣道着の胸元を直しながら、からかうようにそう言った。


「まあ、頑張るさ」

「うん、そだね。えっと……江口さん……だったよね? サトちゃん、江口さんみたいな可愛い子見たら、すぐにデレってなっちゃうから、仕事サボっちゃうような時は私に言ってね」


江口さんは何も喋らず、ただにこやかに笑って、みどりの言葉に頷いた。


「じゃあ、私、部活行って来るね! 江口さん、じゃあね!」


みどりはそう言うと、元気に走っていった。