僕がそう言うと、江口さんはにっこり微笑んだ。

後ろから照らす夕日が、同じくらいの身長の、僕らの影を長く伸ばす。

僕はいつも横顔を盗み見ることしか出来ないその相手が、僕の横にいて歩いてくれていることだけで満足していた。



いつもの夕日。

いつもの夕暮れ。

家々から溢れてくる夕飯の匂いと、家路についた家族との暖かな会話。

みんなにとっては幸せだかいつもの光景。

僕はそれをお裾分けして貰いながら歩く。

こんな日もあるんだ。

一生懸命生きてればこんなこともあるんだ。

僕は嬉しくなり空を見上げる。

その空は、夕日は出ているものの一雨来そうな天気だった。

だけど、僕の視界はいつのまにか、霞むことなくクリアに戻っていた。