「んー……誰だっけなあ」

「どうかしたか、トルガ」


「おう、リーク。【ロアロ・メル】って誰だか知ってっか?俺もどっかで聞いたことあんだよな~。

……んでも思い出せねえ」


「へえ、ずいぶんと早い老化だな。そのまま朽ち失せろ」


「なんかお前鬼畜度増してねっ?!」



馬車の中にて。

無事合流した二人は魔族が攻めてきたことにより、予定を早めて出発したのだった。


馬車の小窓から見える母国。

それよりもっと遠くを見つめているようなリークに、トルガは「ま、いっか」と言って胡座(あぐら)を掻く。



「徐々に思い出していきゃあいいだけの話だし、それにもしかすっとまた会えるかもしんねえしなっ!」


「……やけに嬉しそうだな」


「なっ…、はあ?!嬉しそう?!俺がああ?!ンなわきゃねーだろ!変なこと言ってんじゃねーよっ!」



そう言いつつも赤面するトルガに、面白くないとリークはトルガにチョップをする。

「なんでだよ?!」とトルガに睨まれたがそこは王子、無言でスルー。