なるべく弟の方を見ないように父親の問いかけに答えていると、不意にガタンという音が響いた。 私の斜め前で、瑞貴は食卓に両手をついて立ち上がっていた。 そのまま、時が止まったみたいに動かない。 「ん、どうした瑞貴?」 お父さんの問いかけに答えることもなく、 「……ごちそうさま」 ぶっきらぼうにそうつぶやいて、瑞貴は食卓を離れた。 振り向きもせずに階段を上っていく。 「なんだ、あいつ」 会話が中断された食卓の上に、ぽとりと、寂しげな父の声が落ちた。