弟に告白なんかされて、料理にも集中できなくなるほど戸惑っている私に比べ、
瑞貴はわりと普段どおりに生活しているようだった。
ただ、私に対しては驚くほどそっけない。
無視をされているような気さえする。
食卓で顔を合わせても目は合わないし、話もしない。
ただ「いただきます」と「ごちそうさま」を機械的につぶやくだけですぐに部屋に戻ってしまう。
お父さんがいるときも、2人だけのときも。
まるであの告白は夢だったんじゃないかと思うくらい、瑞貴は私の方を見なかった。
それでも会話が極端に減っているという事実が、逆にお互いを意識しているという証拠だった。
同じ家に住んでいるからこそ、それは顕著で、
透明な声が苦しげに繰り返した「好きだ」の意味を、私はひたすら考えた。
そんなふうに不自然な距離をあけながら数日を過ごしたある夜、事態は一変した。


