「いーちか」
SHRが終わって廊下に出ると、窓枠にもたれている長身の彼氏が目に入った。
「石川君」
「帰ろうぜー」
にかっと白い歯を見せる彼に、つられるように私も笑う。
一緒に帰るといっても私は自転車通学で石川君は電車通学だから、最寄の駅まで自転車を引きながら一緒に歩くだけだ。
たったそれだけの時間のために、石川君はこうやって私を待っていてくれる。
いつものように駐輪場から自転車を取ってくると、石川君はいつかみたいに嬉しそうにハンドルを取った。
「送ってくよ」
そんな言葉に心臓が反応する。
「え、えと、ごめん、今日はいろいろ……用事があって。その、郵便局寄ったり、買い物したり、するから」
しどろもどろになりながら言う私に、「そっか」と言って残念そうに眉を下げる。
けれどすぐ明るい表情に戻った。
「んじゃ、駅まで乗ってこうぜ」
促されるまま後ろの荷台に座り、広い背中に手を置く。


