*正しい姉弟の切愛事情*



「え……」
 

顔を上げると、サンドイッチを手にしたユリが心配そうに私を見つめていた。


「な、ないよ何も」

 
焦って答えると友人は小さな顔を傾けた。


「本当? さっきから数え切れないくらい溜息吐いてるよ」

「え、うそ」

「ほんと。自分で気づいてなかったの?」
 

――全然気づいてなかった。
 

心の中だけでつぶやいて、笑みを作る。


「ああ、今日、2日目だから……そのせいかも」
 

生理は先週終わったばかりだったけれど、咄嗟に嘘をついた。 


「そうなんだ? 保健室に薬もらいに行く?」

「ううん、平気」 


首を振って、机上のお弁当箱に向き直る。


「今日は石川くん、どうしたの?」

 

訊かれて、私は自分の彼氏の顔を思い出した。